裁判手続「付郵便送達」を悪用した手口、知らない間に預金が差し押さえられる

2021年7月2日

2021.04.26のニュース記事

知らない間に裁判が行われ預金を差し押さえられる。そんな信じられない事例が、福岡県内で相次いでいる。なぜそのようなことが起きたのか? そこには、裁判手続きの盲点とも言える「隙間」があった。

知らぬ間に敗訴 預金約134万円差し押さえ…裁判手続きの「隙間」悪用 原告は勝手に養子縁組も – FNNプライムオンライン

この事件を簡単に説明すると以下のようになります。

  • 被害者:裁判の存在すら知らず口座の資産を差押される。加害者とは元雇用主の関係。
  • 加害者:裁判手続き(付郵便送達)を悪用し被害者不在の欠席裁判で勝訴、被害者の資産を差押。

なぜこのようなことが可能だったのでしょうか?

民事訴訟では裁判所から被告の住所(通常は住民票上の住所)に「訴状」を送り、被告がそれを受け取ることによって裁判が行われることを知ることになります。つまり民事訴訟を行うには裁判所から被告に知らせることが原則です。

なので被告の所在が明らかでない(訴状が受け取れない)場合は裁判ができないのですが、それでは逃げ回っている人間を訴えることができないため、被告の所在が明らかでない場合に行える「付郵便送達」「公示送達」という手続きがあります。

  • 「付郵便送達」…被告が訴状を送る住所に住んでいるが居留守を使うなど訴状を受け取らない場合
  • 「公示送達」…被告が訴状を送る住所には住んでおらず所在不明の場合

その際には訴える人が住所周辺での聞き込みや洗濯物・電気などの生活状況から「現地調査報告書」を作成し裁判所に提出を行います。

この事件の加害者は、被害者が実際には住んでいない嘘の住所で訴状を作成し、嘘の現地調査報告書を提出して「付郵便送達」の手続きを行いました。

記事では裁判手続きの盲点となっていますが、結局のところ裁判所がまんまと騙されて加害者に勝訴判決を出してしまったのです。※その後判決は取り消されました。

この事件の加害者が詐欺罪となるのかは不明ですが、どのような結果となるのか気になります。